2014年8月15日金曜日

患者と治療者の間で―“意味のある作業"の喪失を体験して

幼いころから音楽を趣味とし、後に仕事にもしていた著者は、音楽療法に興味をもったことがきっかけでOTに転身。しかしある日、自己免疫疾患である膠原病を発病、患者となる。
本書は「患者」でありながら「治療者」でもある著者が、2つの立場の間から医療・社会、そして自らを見つめた、「私の病の物語」である.患者になったことで感じた医療への疑問、病を抱えつつ社会で生きることの困難さについて指摘し、また患者の視点からみた「障害受容」についても触れる。
患者と治療者、両者の気持ちをつなぐために必読の書。

精神科作業療法士という著者は、突如難病膠原病に襲われる。病、障害、困難・・それらは、自らが全く予期しないのに突如として訪れる。そのときに体験することは、想像もつかない身体的痛みと予測もつかない不安、そしてそれに伴い、今まで自分が自らの存在においてもっとも大切にしていたものを喪失していく・・そのようなことを医療従事者でありながら、体感していくプロセス、その壮絶な想いを赤裸々に告白されるとともに、患者として体験した医療従事者に対する想い、怒りの気持ちも正直に述べられている。
 メンターの存在の大切さ、家族の有無、独居かそうでないか・・様々な要素をここに記されるなかから、私たちは読み取ることができる。
 また、研究者としての彼女の研究に伴い、彼女自身の体験以外にも、実際に障害と共にあった芸術家たちの事例にも触れられており、本書の内容の深みと充実さが半端ないことを示される。
 また、筆者が博士課程で学んだ指導教官の姿勢には、医療福祉業界とはまた異なる視点、またその教官の人間性にまで触れ、それによってどれだけ、彼女が変化させられたかを記述されている点も非常に興味深い。
 今現在、医療職、福祉職、対人援助職にある方々には、患者側として、医療職として、研究者として、学生としての著者の体験からくる心からの叫びと深い洞察を生に触れる機会を本書を通してぜひ体感していただきたい。


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